第18回 TIS公募

レトロ風な少女と動物をモチーフとして色鉛筆の質感にデジタル要素を加えたタッチ。大賞を受賞したアサバマリエさんが生み出す独自の世界観とご自身について、色々お聞きしました。

 

——— 受賞の感想をお聞かせください。

素晴らしい賞をいただき、大変光栄で心から嬉しいです。

メールでご連絡をいただいた時は、とても信じられない思いで【大賞】の文字を何度も見返しました。「間違いだったらどうしよう」と、ネット上に名前が掲載されるまではドキドキしながら日々を過ごしていたので、発表後はホッとしました。
ここまで決して平坦ではない道のりだったので、苦労がひとつ報われたという思いです。関係者の皆様、審査員の方々、支えてくれた家族や友人などへ、感謝の気持ちでいっぱいです。

他の方の素敵な作品を目にすると、自分の作品の方向性に対して本当にこれでいいのかと迷ったり自信がなくなったりすることがあります。今回賞をいただいたことで、やってきたことが認められたように感じ、またこれからに向けて強く背中を押していただいたように思えます。
改めて自分自身を見つめ益々精進することで、これからも多くの方に楽しんでいただける作品づくりをしていけたらと思います。

 

——— 公募への応募のきっかけをお聞かせください。

自分の描きたい絵で勝負してみたい、アーティストとして「腕試し」をしたいと考え、友人のイラストレーターにどのコンペに応募するとよいか相談し知ったのがきっかけです。TISは、過去の入賞作品のレベルが非常に高く、審査員も活躍されている方々だったので評価を聞いてみたいという気持ちもあり、ぜひ挑戦しようと決めました。

 

——— 受賞のお知らせが入った時に、ちょうど個展を開催されていたそうですが周りの方の反応はいかがでしたか?

多くの方からお祝いの言葉をいただきました。今までお会いしたことがなかった方がSNSで受賞を知りわざわざ個展に駆けつけてくださったり、友人やクリエイター仲間も自分のことのように受賞を喜んでくれたことがとても嬉しく、感動しました。

 

——— 影響を受けた作家の方やエピソードはありますか?(イラストレーターに限りません。)

小さな頃に読んだ絵本、特に「しろいうさぎとくろいうさぎ」(作者:ガース・ウィリアムズ)と「バーバパパ」シリーズ(作者:アネット・チゾン&タラス・テイラー)は、絵を描く原点になっていると思います。
前者は、色数は少なく一見暗い印象もありますが、丁寧で静かな描写や「間(ま)」の美しさがあり惹きつけられました。登場するうさぎの絵を、よく真似して描いたりもしていました。
子ども向けの絵ではなくとも、素晴らしい絵は小さな子にもちゃんと伝わり、子どもの感性を豊かにしてくれるものだとして、今でも私にとって道標的な作家さんです。

後者の「バーバパパ」シリーズは、とにかく賑やかで、かろやかに描かれた個性豊かなキャラクター達が繰り広げる世界観が大好きでした。何度も読み返し、好きなキャラクターを主人公にしたオリジナルストーリーを考えたりしました。

対照的な2つの絵本ですが、どちらも絵を描く喜びに溢れていて、その楽しさが読者に伝わってきます。
今でも大好きな絵本で、大人になってから改めて購入し、いつでも手に取れるよう本棚に収めてあります。

好きな絵本たち

——— 作品を描かれる時の発想、着想はどんなところからきますか?また大事にされていることはありますか?

言葉で説明するのはとても難しいのですが、「何気ない風景の中にある色や形の組み合わせなどからインスピレーションを受け、一度それらを忘れた頃、ある日描きたいカタチになって降りてくる」という感じです。
作品は、自分自身が投影される部分が少なからずあると思うので、多角的で豊かな視点を養うために色々な経験をすることも大切にしています。
旅行が趣味なので、国内外の旅先での景色や文化などを実際に見て経験したことが私の着想や表現の糧になっていると思います。

 

——— 今回の作品の場合、女の子や白い犬にモデルはいますか?

オカッパ頭の女の子は、小さい頃の自分がモデルだと思います。
ただ、作品として「自分自身を描いた」というよりは、あの頃の髪型や服装を懐かしんで参考にしたという感覚ですので、あくまで絵をご覧いただいた方が、ご自身や娘さんに投影していただくなど自由に楽しんでいただければ嬉しいです。
その他の作品も具体的なモデルはいませんが、唯一「網戸とペキニーズ」の白い犬だけは近所に住む老犬をモデルにさせていただきました。
結構な年齢のようで、いつも舌を出しながら窓際に佇んでいるのがとても愛おしいワンちゃんです。

 

——– 作画方法について教えてください。

紙に鉛筆や色鉛筆で下描きし、それを元にAdobe Illustratorで仕上げていきます。
まずはアナログで描くこと、次にデジタルで仕上げるという工程や絵との距離感が、今の自分の性格や作風に合っていると感じています。

———作品を作るときに一番に気遣っているところや一番みてほしいところはどこですか?

元の手描きの柔らかい曲線をデジタルでもちゃんと再現できるよう気を遣っています。

作品の「最初のインパクト」も大事にしていますが、その後、何度でも何年でも楽しんでいただけるよう細部にもこだわって描写しているので、機会があればぜひ直接作品をご覧いただきたいです!

仕事場風景

——–一日のタイムスケジュールを教えてください。

ある一日を紹介させていただきます。(理想も兼ねて…)
心身健康であるために、仕事の合間に家事やストレッチなどで体を動かすこと、オフの時間は絵や仕事から少し距離を置くことを心がけています。

08:00-10:00 起床、朝食、家事、ストレッチ(ラジオ体操)
10:00-11:00 仕事(メールを確認し返信するなどの事務的作業)
11:00-13:00 仕事(制作活動)
13:00-14:00 昼食、ストレッチ、エクササイズ
14:00-17:00 仕事(制作活動)
17:00-19:00 家事、運動(ひと駅分ウォーキングを兼ねて夕食の買い物とジムへ)
19:00-20:00 軽食、仕事(制作活動)
20:00-20:40 エクササイズ、風呂、家事
20:40-22:00 オリジナル創作活動
22:00-24:00 夕食、団欒(テレビ鑑賞=スポーツ観戦や動物のドキュメンタリー中心)
24:00-25:30 ストレッチ、就寝

 

——–今後の展望、チャレンジしてみたいことはありますか?

今後は、これまであまりやってこなかったお仕事、特にパッケージイラストやブランディングのキービジュアル、装画などの仕事に携わってみたいです。絵本や音楽イラストなど、子どもたちの目に特に触れる分野にも挑戦したいと思っていますし、海外へのコンペにも参加してみたいです。
将来的には、野生動物の保護や多様性などへの支援にイラストで関わっていければ嬉しいです。
また、現在はツールとしてデジタルをメインで描いていますが、手で線を引く楽しさをもっと味わいたいので、色鉛筆や絵の具などアナログ中心の作品も少しずつ増やしていきたいです。

 

——–ありがとうございました。アサバマリエさん、これから益々のご活躍を願っています!

お気に入りのお土産

アサバマリエ/MARIE ASABA
富山県出身、横浜市在住。
多摩美術大学絵画学科油画専攻 卒業。
2014年 グラフィックデザイナーを経てイラストレーターとして独立
グループ展や個展などに参加。
2021年 Adobe「年末クリエイティブコンテスト」 審査員賞
2022年 第224回ザ・チョイス(角張渉さん選) 入選
2023年 第40回ザ・チョイス年度賞 入賞
2023年 第18回TIS公募 大賞
趣味は野生動物を観ることと、海外旅行、スポーツ観戦、ワインを嗜むこと。