第18回 TIS公募

《 審査員総評 》

◆ 大島依提亜(グラフィックデザイナー)
大変光栄な公募の審査をさせていただき、新たな作品の可能性にたくさん触れられて、楽しく、僕自身も学びの多い機会でした。
今後応募する方に、審査をしていて気づいた自分なりの注意点を少しお伝えしたいです。
・どんなに作品が良くても、1点だけの応募だと判断できなくて落とされてしまう可能性が高い気がします。
・逆に色々な作風をたくさん応募されても、何がやりたいのかわからないと判断されてしまうかも。
・とはいえ、確固たる作風に捉われすぎない方が良い気がします。応募された作品の外にある可能性も感じたい。

◆ 関戸貴美子(アートディレクター/デザイナー)
イラストレーションに限らず、たくさんのイメージが溢れ、個人でも作品を簡単に世界中に発表できる今、賞の存在について考えることが少なくありませんでした。
今回審査員の方々から、なるべくたくさんの良い作品をピックアップしたいという思いを感じ、イラストレーションの歴史の流れを知っている方々の目を通じてタイムリーさとタイムレスさの双方の価値観で作品を見ることがイラストレーション業界の土壌を豊かにしてくんだなと今回感じることができました。受賞者のみなさん、本当におめでとうございました。
個人的には票を入れた作品があまり上位に入りませんでしたが、審査員が変われば結果が変わるということでもあると思いますので、選考から外れた方もあまり気負わずそれぞれのスタイルを突き詰めていっていただきたいです。私自身とても勉強になった審査でした。ありがとうございました。

◆ tupera tupera(クリエイティブユニット)
初めて審査に参加させて頂きましたが、さまざまな個性的な作品を見ることができて、とても刺激的でした。今の空気感や表現の新たな可能性を感じることもできました。ただ個人的には、表現優先の作品が多く、アイデアの面白さから始まるような作品がないのが残念でした。そういった、ベクトルの違う、ぱっと見て感情が動くような作品や表現者が、今後出てくることを期待しています。

犬ん子
全体的に、淡く夢みつつどこか身を委ねている感じが多い気がして、それが時代なのかなと思いました。そしてそのムードをうまく魅力的に提示されてる作品も多くて、さすがだなと思いました。今後目にする機会を楽しみにしております。

◆ 木内達朗
幅広い作風の作品が応募されていたと感じましたので、よかったと思います。ただ、応募作品が一点だけの人がけっこういたので、そういう場合はその人の世界観が判断しにくく、少し残念でした。入選はだいぶ狭き門なので、残らなかった人の中にも好きな作品はたくさんありましたが、やはり入選作品は残るべくして残ったものなのだろうというレベルの高さを感じました。ただ、見たこともないような圧倒的にすごい作品は無かった印象です。

◆ 北澤平祐
全体のクオリティーが高いことに加え、内容、画法共にバラエティー豊かなことが印象的でした。本当にいろんな絵があり、いろんな考えがありそこの優劣をつけることは想像以上に困難でした。惜しくも受賞されなかった方も紙一重だったと思います。審査前はデジタルのみの審査ということに少し不安を覚えたりもしましたが、逆を返せばデジタル作品もアナログ作品も同系列に扱え、純粋に作品内容のみで審査できるのはこの賞の利点だと思いました。

しりあがり寿
初めての審査、いろいろな作品に触れられて楽しかったです。ただ自分にとってイラストレーションは絵画と違って、まず問いがあっての答えだと思ってるとこがあるので評価が難しく、ついつい個人の趣味中心の審査になってしまいました。でも改めてたくさんの作品から絵を描く楽しさを感じました。ありがとうございました!

◆ タケウマ
多数の作品が集い、ほんとにもうめちゃくちゃ大変でした。
ご応募ありがとうございました。

一次審査通過にはなりませんでしたが、金魚が次々に金魚すくいを破って落ちていく作品がありました。
モチーフの選定がよかったです。

人って生きてると、絵として描かれているのは見たことが無い(もしくは殆ど知らない)けど心に残るモノやコトに出会う機会は色々あります。

いわゆる絵になるモチーフ、絵になる場面(例えば10~20代の女性、例えば猫)を描いた作品は多かったです。
アウトプットが非常に秀逸であればそれだけでもコンペに勝てます(見惚れますし)。
でも、折角表現するのだから、絵の中に大なり小なり「多分いまのところ私だけしか描いてない、 心に残っているこれを描きました」が見れると、僕は嬉しいです。
それを描いて、活躍できるかどうかは知りませぬ。あくまで僕の好みです。

◆ 丹下京子
1次審査で残る人はみんな上手い人ばっかりです。
みんな技術があることを自分でもわかっているし、真面目だし
自分の作品の見せ方も知っている。
その中で入賞するかどうかの違いは本当に微差だと感じました。

で、結局どこで判断したかといえば、私が個人的に好きかどうか
それとその人の作品を(5点くらいがベストな気がします)全部見て、描きたいもの、世界観、主張が強く明快に伝わってくるかどうか、ぐらいでした。(他に審査基準があるとしたら教えてほしい)

だからどうしても1点しか応募していない作品は選びづらい。
方向性をまとめた作品を5点くらい描き溜めて
今回入賞入選した方も、逃した方も
まだまだ様々なコンペに挑戦することをお勧めします。

力があればどんなコンペでも入賞するだろうし
別のコンペでは全く引っかからないかもしれない。
それがきっかけで自分の絵が突然変わるかもしれないし
とんでもないチャンスが舞い込むかもしれない。
とにかくやってみないと始まらないと思うので。

最後に‥今回の審査でいくつかデータサイズを間違えたのかな?と思われる作品がありました。(画像を拡大したら粗くて細部が全くわからなかった)

審査の結果を左右してしまうので、応募する際、最後の最後にもう一度、サイズ確認をお忘れなく‥ってあまりにも当たり前のことですが‥

◆ 西山寛紀
今回初めて審査員を務めました。全体の印象としては、幅広い作風で見応えがありましたが、風景を題材にした作品が少し多いような気がしました。そのような作品は、何かしらの新規性や独自の視点があるとさらにもう一歩踏み出した印象になるように感じました。

印象に残った作家の特徴としては、

・出品枚数が多く(少なくとも3点以上)、作品の展開力を感じさせることに成功している。
・表現様式や世界観がはっきりしている。
・新鮮な提案(その人独自の視点や興味が色濃く反映されている)がある。

少なくともこれらの点を高いレベルで満たしていたように感じました。

入選以上の作品は、どれもそれぞれに華があり、甲乙付け難い印象でしたが、イラストレーターとしての総合的な力を感じる方、今後が楽しみな方に票を投じました。

◆ 100%ORANGE
直感でパッと選ぼうと思って審査に臨んだのですが
無理でした。やっぱり考えてしまいました。
ただ、そんな中でもみた瞬間に通過を確信した作品がいくつかあり、最終審査で再会すると「来たね」と嬉しくなりました。
最終まで残った方々は思い切り喜んで良いのではないでしょうか!