第17回 TIS公募

美しい鉱物の中に広がる世界。大賞を受賞したゲレンデさんの作品たちには、不思議な存在感を感じます。鉱物の中の空間性に興味を持ち始め、そこに風景を見出し、イラストレーションとして丁寧に描いたゲレンデさんへ、8つの質問です。

 

——— 受賞の感想をお聞かせください。

入選できたら嬉しいなと思っていましたが、ご連絡いただいた時は「まさか!」と思いました。こつこつ同じアプローチで作ってきたものを評価していただけて嬉しいです。

 

——— 公募への応募のきっかけをお聞かせください。

納得のいく作品が貯まってきたこともあって、発表の場を広げてみようと2019年からコンペに出し始めました。そんな中でTIS公募再開の記事を拝見したため応募しました。

 

——— 今回初めてwebでのTIS公募となりましたが、もし従来の応募方法(原画の持ち込み、または郵送)でも応募していたと思いますか?

前向きに検討したと思います。ただ、絵の具などが作る原画の存在感に対してプリントでは出せない魅力があると感じているため、アナログの作品をある程度描き貯めてから挑戦しようとしていたかもしれません。

 

——— 作品からはどれも鉱物への強い思いが感じられました。HPを拝見しましたら、収集されているとのことですね。鉱物が好きになったきっかけや、描き始めた時期などエピソードがあれば教えてください。

学校のグラウンドで綺麗な石の粒々を探してみたり、ゲームのアイテムとしてのクリスタルに興味を持ったりという感じで、幼い頃からキラキラした塊に興味を持っていました。モチーフとして注目するようになったのは「内包物を含む水晶」の存在を知ったことです。水晶が結晶する際に他の鉱物や気体、液体などを内包することがあるのですが、結果的にそれらの内包物が水晶の中に風景を作っているように見えることがありました。それをきっかけとして、鉱物のもつ空間性に興味を持ち始めました。

ゲレンデさんの鉱物コレクション

 

——— 愛用の画材があれば教えてください。

基本的にPCを使って制作しており、Wacom IntrosProとProPen3Dを愛用しています。

作業場とツール

 

——– 影響を受けた作家の方はいますか?(イラストレーターに限りません)

ベルギーの画家ルネ・マグリットさんとプロダクトデザイナーの倉俣史朗さんでしょうか。二人の共通点は、作品に媚びた感じが全くないところだと思います。「おもしろい」「美しい」など感覚的に訴えてくるのに、余計な感情や媚びのようなものが全くなく、結果としての作品がとことんクールなところが好きです。

 

——–アニメーションの勉強もされてきたようですが、元々はアニメーション関係の仕事に興味があったのでしょうか?それが今の活動に活かされていると思うことはありますか?

もともとはミュージックビデオの制作に興味があり、学生時代は音楽をテーマにしたアニメーション作品を制作していました。卒業以降は本名でフリーランスのアニメーターとして活動してきましたが、アニメーションは完成までに必要な作業量がどうしても多くなるため、特に私の場合は画面を設計していく際に効率を重視することが通例となっていました。その仕事に対するカウンター的な意識から、コストを度外視し、動かない画面に対して心ゆくまで手を入れ完成度を高めていきたいという思いがゲレンデとしての活動の根本となっています。

 

——–今後の展望、チャレンジしてみたいことはありますか?

自分はモチーフの何を見つめているのかを考え、長く作り続けていきたいと思います。また技法としてデジタルだけでなく、実画材を使って質感を活かしたアナログの作品制作にも挑戦してみたいです。

 

——–ありがとうございました。ゲレンデさん、これから益々のご活躍を願っています!

 

作品のモデルとなった鉱物


ゲレンデgelande

北海道出身。多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科卒業、東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。イラストレーター・画家として神奈川を拠点に活動する。

 

 

告知

2022年1月発売の「illustration 2022年3月号 No.233」(玄光社)では、今回の公募結果発表に加え、大賞 ゲレンデさん×審査員 大久保明子さん(装丁家・文藝春秋デザイン部)の対談が掲載されています。ぜひご覧ください!