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小池アミイゴ

NEWSニュース

2021.03.22

個展「東日本」2021、次へ


2012年3月の開催から6回目の開催となった個展「東日本」
3月17日に9日間の会期を無事に閉じることごできました。

コロナの状況の中、お気遣い頂いた上でお運びくださいました皆様、
ありがとうございました!

描いた絵を前に語り合う言葉は、ボクが次に何をするべきかのインスピレーションに溢れていて、1人ひとりと向き合う時間がほんと愛しかったです。

そうした会話からは、「東日本」というタイトルで10年やって来た意味に気づくことも多かったです。

今回は「はるのひ」という絵本を上梓した直後ということもあり、
その原画も数点展示してみました。

 

「はるのひ」は、お話をいただいてから仕上がるまで3年3ヶ月かかりました。

小さな男の子がお父さんと声掛けあいながら走ってゆく、小さな冒険の物語。

10年前の震災や原発事故、その後も度々起きた自然災害、そしてコロナの感染拡大という時代の中、日本の各地でお会いする人たちの暮らしに触れ、子どもたちが育ってゆく上で必要とされる、親子関係の原風景みたいなものが創れたらいいなと願いました。

ただ、それは頭で考える物語では無く、身体で覚えるようなことだろうなと。

それがどういうことか深く考えること無く、地図も持たず、東北にも熊本にも台湾までにも広がる広野を駆けてみた。

そんなやり方だから、この物語が「春」を舞台とする必要を感じた時、
この少年が「こと」という名前を持った時の2回、
すべての絵を描き直しました。

さらには、少年の指先の角度が違っているのを修正しようとしたら、
結局その他99パーセントの画面全てを描きなおすことになった。

そんなことを20回くらい繰り返した場面もあり、
結果、3年3ヶ月も荒野を彷徨い続けてしまった感じです。
 

自分はなぜこんな遠回りをして絵本を作らねばならないのか?

制作期間中は分からなかったことが、
今回、東北を始め日本各地や台湾まで描いた絵と並べてみることで、
明快になったように思います。

ボクが子どもたちと共有したいことは、
ボクが人との出会いで得た感動の風景を、確信を持って一気に描き切る、
突き抜けた気持ちの良いもの。

1枚の絵を描き続ける先で、
「あ、描けた」とバタっと筆が止まる瞬間があります。

そうしたものはあらゆる理屈を突き抜け、
昔からそこにあったもののような、
もしくは、
おおらかな時間の流れを宿しただそこにあってくれる、
そんなものであるように思います。

理屈じゃなく、ただ存在する。

そうしたものの尊さと儚さと潔さ。

津波で、原発事故で、コロナで、
もしくは生きづらいと言われる時代の中で、
方っておいては失われてしまいかねない美しきもの。

それを表現するためには、
制作にちょっとでも躊躇いを感じたら、
全部を描きなおすしかないんだなあと。

そこで手を抜いてしまっては、
三陸の凍てつく海でワカメや牡蠣を育てている人や、
天草の灼熱の海で天日干しの塩を作っている人や、
台湾では育てるのが難しい梨の収穫に成功した人や、
一杯の珈琲を提供することに人生をかけて取り組んだ人に
伝わるものは出来ないということです。

それがわかっていれば、もっとスムースに描けたのか?
それがわかったことで、これからはもっとスムースに描けるのか?

それはわかりません。

ともかくこの3年数ヶ月は、こうした破壊と再生を繰り返すしか、
描くべきものが生まれなかったということです。

 

絵を描くことを続けてきて、
2021年の段階で、相変わらず新人のような気持ちでいられることが、
良いのかどうか分からないですが、

これからも「わからない」ことを自覚し、
人との愛しき出会いの中で、なにか輝くものを見つけて行けたらいいなと願って、この活動を続けてまいります。

今回の展覧会で最初に旅立ったポピーを描いた絵があります。

ご購入いただいたのは、ボクよりずっと若い方ですが、
ボクはこの人の仕事や現場に投下する美意識に深い尊敬を抱いています。

10年間で6回の「東日本」を開催した中、これまで3枚の絵をご購入くださって。

その3枚の違い、
以前はグレイッシュな作品を選ばれていたのが、
今回は暖かな色彩のものを選んでくれたということに、
今の時代に必要なものを教えていただけたような。

こうした気づきは、丁寧に構築してきた関係性の中でのみ感じられることだなあ〜と。

今はSNSの発信などで自分をアピールすることが当たり前になっていますが、
そんな中でも、
自分にとってSNSは1人ひとりとの対話をする道具だとの考えを持ち、
愚直にひとりとのコミュニケーションを重ねてゆこうと思います。

その先で、またなにか生まれたら、1人ひとりに分け合う心持ちの元、
絵のある気持ちの良い空間を創ってゆきますので、
その際はまた足を運ばれ、ひと言ふた言の会話を頂けたらうれしく思います。
 

こうした現場を丁寧なオーガナイズを与え続けてくれる space yui 
今回もありがとうございました。

そしてもはや次
ですね。

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0317
PEACE!!