COLUMN
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Trend & Illustrations

2021.11.04

Trend & Illustrations #9/山下 航が描く「Compassionate Collective」

アドビではビジュアルのニーズを様々な角度から分析を行い、そのトレンド予測をトレンドリポートとして毎年発表しています。
2021年のビジュアルトレンドをテーマに、東京イラストレーターズ・ソサエティ会員のイラストレーターが描きおろした作品のコンセプトやプロセスについてインタビューする連載企画「Trend & Illustrations」。
第9回目のテーマは「Compassionate Collective – 思いを分かち合う」。デジタルとアナログを使い分け、人や風景を緻密な描写で捉える山下 航さんに、作品についてのお話を伺いました。

 

プロフィール

 
1979年、広島県生まれ。
2004年、東京藝術大学大学院美術研究科修了。デザイン会社勤務を経てイラストレーターに。
2013年、インドでのアーティスト・イン・レジデンス「土のつわもの」にスタッフとして参加、現地で壁画やスケッチを描く。
2017年、東京・表参道で初めての個展「シアラの春」を開催。
現在は雑誌やパンフレット、書籍、Web、パッケージなどで幅広く活動している。
2020年4月から横浜美術大学助教。
メキシコ・パンアメリカン大学/Brand Mascots lab メンバー。

https://wataruillust.tumblr.com/
https://tis-home.com/wataru-yamashita/

 

「思いは輪を描く」2021年

「思いは輪を描く」2021年

思いは輪を描く

──「Compassionate Collective – 思いを分かち合う」というテーマを選んだ理由を教えてください。

自分にとって、もっともビジュアル化しやすいテーマでした。Adobe Stockでイメージを検索するとサムネイルが小さく羅列されますよね。膨大な数が並ぶから、探している人には一瞬で良し悪しが判断される。自分の絵は細かい線画で、引いた画になると目立たない自覚はあったので、まずは円状の形をパッと見で認識してもらえるようにして、この作品を描きました。

──今回、TISサイドでアナログ作品、Adobeサイドでデジタル作品、2つのパターンをご用意いただきました。どのようなプロセスで描きましたか?

最終的に提出する予定だったのは、アナログの作品です。iPadでラフを描いて、色や明度の計画を立てて、印刷して、それをトレースしてアナログのほうを進めていって。途中でデジタルのラフとアナログと、両方のデータをAdobeスタッフの方に確認してもらうと、「デジタルのほうが汎用性が高いのではないか」というご意見をいただきました。デジタルのほうは、背景をホワイトで何もない状態にしているので確かに使いやすい。アナログのほうは、紙の地色が残っていて風合いも感じられる。データを使う人の目線によって変わるので、今回は2つとも提出することになりました。

──多種多様な人々が描かれていますね。

人種、国籍、年齢、ハンディキャップの有無。多様な人を描くことが「思いを分かち合う」というテーマにつながると考えました。実在する国同士の関係性や、信仰の違いなどの知識を、自分が十分に持ち合わせていないこともあって、特定の国や宗教と分からないように特徴をミックスして描いています。

──音楽を楽しんでいる人たちの姿が印象的です。

円形の構図で描いているうちに“何を分かち合うか”をもっと突き詰めれば、より今回のテーマを伝えられると気づきました。1つのことに対して人が集まるシーンを描こうと思ったんです。僕は音楽を聴くことが好きなので、音楽をその要素にしました。右上から、女の子がマイクを持って走ってきていますよね。完全なサークルにするのではなく、少し崩して絵のポイントにしてみました。皆が大きく手を振って迎え入れるシーンを描くことで、よりテーマ性を浮かび上がらせています。

──どの人物が、特にお気に入りですか?

どの人も好きですが、ダンスをしている子どもたちが特にいいですね。子どもたちって照れがない場合が多いないじゃないですか。無邪気で、楽しいことが目の前にあったら自然と身体が動き出す。僕自身も意識が絵のなかに入りこむと、そこにいる人が笑顔だったり、驚いていたり、こんな格好だったらどうだろうか、と想像して描くのが楽しいです。視線が重なっている人もいますが、隣り合う人たちの関係性も丁寧に描くと観る人が感情移入しやすいのではないかな、と思いました。そういった細かな部分も「思いを分かち合う」につながりますね。

描くときに、大切にすること

──使用した画材について、教えてください。

Adobeサイドのデジタルのほうは、Procreateで制作したデータをMacのパソコンに移して、AdobeのPhotoshopとIllustratorで作画しました。アナログのほうはカラ—インク。用紙は、アルシュ水彩紙の細目です。

──今回の作品のなかで、資料を参考に描いた部分はありますか?

左上の人がさしている傘と、真ん中上の黄色いギターを持っている人。このギターの人は、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のマイケル・J・フォックスのイメージです。イメージを形にするときに、日々の経験や記憶を頼りにすることも。普段の生活のなかで街ゆく人の所作を観察していることが多いです。目にしたシーンを思い起こして、描くときに反映している気がします。

──配色や描線において心がけていることは?

今回の絵の配色は画面上で片寄らないように気を付けました。紫なら紫、青なら青という風にレイヤーで分けて描いていて、なるべくリズムよく、満遍なく色を置いていますね。人物を描くときは、自然な振る舞いに見えるように骨格を気にしています。それと、手の動きやこぶしの握り方など、“手の表情”は大切にしています。自分の絵において、手はすごく重要だと考えていて、たとえば今回の作品でいうとギターを持っている人の5本の指の見え方やリズム感は、特に丁寧に描いています。上手く描けない場合もありますが、気にするということが大切かなと思っています。

 

『NHKテキスト将棋講座10月号』(NHK出版)
「太地のオフサイド・トラップ」挿絵/2019年

『NHKテキスト将棋講座10月号』(NHK出版)
「太地のオフサイド・トラップ」挿絵/2019年

海を越えてつながる人々

──これまで手掛けたなかで、特に印象深いお仕事はありますか?

2020年2月に「100%片思い~台湾と繋がりたい3人の日本人展」というイベントを友人のアーティスト、イラストレーターと企画して、台北で開催しました。僕は台湾のお茶のある風景をテーマに描きました。その展示にお茶をテーマにした展示があることを聞きつけた台湾のお茶ブランド「THREE LEAFS 三叶」の代表の方が来てくれて、ありがたいことに今度はそのお店で展示会を開かないかという相談がありました。ですが、コロナ禍に入って企画が止まってしまって……。

──いまも延期のままですか?

展示会は出来なくなりましたが、お茶のパッケージデザインを一緒に制作することになりました。Zoomで打ち合わせして、2021年8月にコラボレーションのパッケージが完成。ミーティングには翻訳の方に入ってもらって、メールはGoogle翻訳を駆使して、特にコミュニケーションでは困らずに進めることが出来ました。

 

「THREE LEAFS 三叶」と、山下さんが参加するユニット「THREE GLASSES」のコラボレーションで生まれたプロダクト。赤色のほうがライチ烏龍茶、黄色のほうがパイナップル烏龍茶のオリジナルフルーツティー。

「THREE LEAFS 三叶」と、山下さんが参加するユニット「THREE GLASSES」のコラボレーションで生まれたプロダクト。
赤色のほうがライチ烏龍茶、黄色のほうがパイナップル烏龍茶のオリジナルフルーツティー。


──お茶の会社の方から、絵柄のリクエストはありましたか?

「好きなように描いてほしい」ということで、自分たちで決めました。代表の方が台北での展示会で僕の絵を買ってくれて、それが老舗の製茶卸問屋の人物が入った風景画だったんです。人物が描かれたほかの絵にもよく反応されていたので、「THREE LEAFS 三叶」のお茶への思いをテーマに人物を中心とした製茶過程を描くことにしました。プロジェクト全体のコンセプトは「Beyond the Tea」。海を越えて異国の人々と出会うことが出来た僕たちのように、コロナ禍の困難な状況を乗り越えてこのお茶が人々を結びつけるように、と願いを込めて名付けました。通販で取り寄せることも出来るので、日本の方にも台湾茶の時間をゆっくりと味わってもらいたいです。

絵を描く原動力

──これまでの作品のなかで、思い入れのある作品はありますか?

プライベートな作品で気恥ずかしさもあるのですが、尊敬するオランダのコミック・アーティストであるJOOST SWARTEさんご本人に渡した似顔絵です。高校生のときに買った「THE ROUSERS」というオランダのパンクバンドのレコードジャケットがとても好みで、クレジットを見て彼の存在を知りました。仲介者を経て作品が手に渡ったのですが、彼はよろこんでくれて。人がよろこんでくれることは、僕にとって絵を描く大きな原動力です。
 

2015年に描いて、JOOST SWARTEさんに贈った似顔絵。

2015年に描いて、JOOST SWARTEさんに贈った似顔絵。


──描くためのインスピレーションは、どこから得ていますか?

音楽のレコードジャケットはよく眺めていますね。Instagramで中古レコード屋のアカウントをフォローしていて、流れてくるジャケット写真は刺激になります。今後の目標としては、CDやレコードのアートワークや音楽雑誌の表紙絵にも携わってみたいです。

──Adobe Stockを利用してみて、いかがでしたか?

Adobe Stockは契約の体制がしっかりしていて、安心して販売することができます。これから活用していくにあたり、アカウント内のアクセス数などの数値も分かりやすく、分析、管理もしやすいのではないでしょうか。不明な点も丁寧に教えてもらえるので心強いです。これからオリジナル作品をアップしていくことが楽しみです。
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