COLUMN
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Trend & Illustrations

2020.10.09

Trend & Illustrations #4/川﨑真奈が描く「From Me to We」

アドビが予測する2020年のビジュアルトレンドをテーマに、東京イラストレーターズ・ソサエティ会員のイラストレーターが描きおろした作品のコンセプトやプロセスについてインタビューする連載企画。第4回目のテーマは「From Me to We」。人種や国籍にとらわれず、魅力的な人物を描く川﨑真奈さんにお話を伺います。

 

プロフィール

 
東京都生まれ。法政大学経営学部卒業。F-school of illustration受講。山田博之イラストレーション講座6期修了。
2013年に初個展。以降、雑誌や書籍等で活動。
第4回「イラストレーターズ通信コンペ」入選 、第192回「ザ・チョイス」入選(南伸坊氏選)、第15回「TIS公募」入選、ギャラリーハウスMAYA「装画コンペ」vol.17入選。

http://www.milmil.cc/user/mana
https://tis-home.com/Mana-Kawasaki

 

ビジュアルトレンドについて

──今、どのようなテーマのビジュアルが求められているか、ストックフォトサービス「Adobe Stock」でのキーワード調査などを参考に、Adobeが予測した2020年のビジュアルトレンドの1つが「From Me to We」です。

Adobe Stockに作品を掲載・販売する前提で、スタッフの方からいくつかご提案いただいたテーマの1つでしたね。

──「From Me to We」は、個人として動くのではなく、同じ価値観を共有する人々がソーシャルメディアなどで声を上げて連帯することで世のなかを変えていく、といった内容が含まれています。取り組んでみて、いかがでしたか?

社会に問題提起するようなテーマをもとに絵を描くことがあまりないので、新鮮でした。自分自身はSNSがそこまで得意ではなく、恥ずかしながら社会的意識はそこまで高くはありません……。社会問題や政治に対する考えなど、周りの人が発信しているのを見て反応する程度です。自発的にはなかなか動かないので、貴重な機会でした。

──企業が環境問題に取り組む姿勢を広告をとおして表現するような、コーポレートブランディングにも関わるテーマです。今回のテーマと作品を中心に、制作のお話も聞かせてください。

広告のお仕事にも興味があるので、自分にとっても刺激のある制作になりました。どうぞよろしくお願いします。

「colorful」2020年

「colorful」2020年

色の調和があってこそ美しい

──「From Me to We」というテーマに決めた理由を教えてください。

これまでこちらの連載で登場した方々が選んでいなかったテーマだったことと、ご相談していた時期にちょうど黒人差別に抗議する運動「Black Lives Matter」が広がっていたこともあって、すぐにテーマが決まりました。

黒人差別の問題は歴史が長く、それゆえ一筋縄ではいかない複雑さもあると知っていたつもりでしたが、報道などをとおして自分が思っている以上に、現在でも黒人の方は日常的に差別の問題にさらされていると改めて感じました。日本ではそこまで差別はないと思っていましたが、日本で生活している黒人でも差別の経験を持つ人が多いことを知り、自分も知らずしらずしていることがあるのかもしれない、他人事ではない、と感じました。

──テーマをどのように解釈して、作品に落としこんでいきましたか?

個々の声が集まることで大きな声となり、世界を変えていくというテーマだと解釈しました。さまざまな肌の色の人たちが並ぶ姿は、肌のグラデーションやそれぞれの個性、肌に合った服の色と相まって美しくなるだろうとイメージしていたので、いろんな色があるからこそ、その調和が美しいということを表したいと思いました。攻撃的な主張はしていませんが、人種や肌の色の違う者同士がカラフルに、幸せに調和している絵で、人種差別の幼稚さを表現したいという想いを込めて制作しました。

──川﨑さんご自身は、小さくても声を上げて価値観や意識を共有し、問題を解決したような経験はありますか?

相撲が好きなのですが、相撲界の不祥事がやたらと騒がれていた時期があり、見聞きしていて気持ちのいいものではありませんでした……。相撲に限らずですが、才能がある人や社会に大きく貢献してきた人でも一度の過ちで再起を許されない風潮に納得がいかず、新聞に投書したり、オンライン署名を集めるWEBサイト「Change.org」で署名したりしました。それが解決の一助になったとは思いませんが、納得出来ない社会の出来事に対して声を上げる経験ではありました。

──これまでの作品のなかでも、人種や国籍によらず、魅力的な人物や風景を描かれていますが、川﨑さんにとって海外の人々や文化は描く対象として身近なものですか?

人物を描いているときはあまり人種、国籍は考えずに描いていることが多いです。単純に魅力的だと思う人物の資料をもとに描くことが多いので、海外の人の写真も資料としてよく使います。風景は旅行で撮った写真をもとに描くこともありますね。海外の街並みや雰囲気が好きなので参考にすることが多くて、そう言う意味では身近に捉えていると言えるかもしれません。

 

「空風」2019年

「空風」2019年

 

自然なデフォルメを生みだす

──イラストレーターを目指したきっかけについて教えてください。

ファッションが好きで、服飾の勉強をかじったことがあります。そのときに自分は服の柄や色を描くことが好きなんだと気づき、それならイラストレーションがいいかな、と。それに、イラストレーターになればテキスタイル制作などファッションの仕事につなげることも出来るかなと思って、イラストレーターの仕事を考えるようになりました。

──イラストレーションはどのように学びましたか? 現在の作風に大きく影響を与えた経験があれば教えてください。

F-school of illustrationと山田博之イラストレーション講座で学びました。F-school of illustrationで人物を描く課題があり、福井真一先生が「人を描くときは顔の中身から描くといい」とおっしゃっていて、試してみたらいい具合に固定観念を外すことが出来て、それ以来、人物画を描くときは目か鼻の穴から描くことが多くなりました。個人的に輪郭から描くと中途半端にまとまった、守りに入った顔になってしまうので、あえて描きづらい顔の中心から描くことで自然なデフォルメが出来るのかなと思います。

 

「うたた寝」2019年

「うたた寝」2019年


──川﨑さんが描く人物の表情やフォルムが魅力的です。人物画において意識していることはありますか?

顔の中身から描いてなるべく自然にデフォルメすること。あとは、モデルの資料選びの時点で自分が魅力を感じるものを選ぶこと。描いてるうちにモデルとはまったく違う人物になることが多いのですが、参考にするモデルの雰囲気や魅力から派生して描いている感じなので、たとえ原型を留めていなくてもモデル選びは重要です。

──人物モデルを探すとき、どういった部分に強く魅力を感じることが多いですか?

ファッションも含めて俗っぽくないというか、あまり現実的すぎない雰囲気のモデルに惹かれることが多いです。なので描く分には、一般的に美しい、おしゃれな人に必ずしも魅力を感じるわけではないのかもしれません。アンニュイだったり、透明感があったり、年齢に関わらず少女性があったり、ちょっと怪しさや不思議な雰囲気があったり……。いかにも人生経験による深みが滲みでてるようなおじいさんやおじさんブームだった時期もありました(笑)。

──今回の作品について、具体的な制作の流れを教えてください。

まず、いろいろな人種の人物写真をネットでランダムに探しました。そして、もともとストックしてある気になったモデルの資料とミックスして、何パターンかの肌の色の人物を並べて描いていきました。鉛筆の下描きの時点で構図も細かいパーツも完成形の状態で描き、その後着彩に入りました。

──絵の制作のなかで、好きな時間はいつですか?

あえて1つ挙げるなら、着彩段階です。それと、絵に人物が入る場合は顔の中身が大事なので緊張しますが、そこをクリアして解放されて描く感じも好きです。顔の中身がうまくいくと俄然テンションが上がってきて、そこから背景の色や細かいところがスイスイうまく描きすすめられたり、楽しむきっかけがつかめたりします。でも、気持ちが乗らないことも多いです……(笑)。
 

「雪風」2019年

「雪風」2019年

 

 

画材と制作の話

──普段はどのような画材を使っていますか?

アクリル絵具と色鉛筆で描いていて、リキテックスプライムも結構使います。クラシコ5という水彩紙の細目は真っ白でツルツルな紙なので発色がよく、タッチがガサガサと出やすいので使うことが多いです。

──好んで使っている色鉛筆のブランドがあれば教えてください。

いろいろ使っていますが、DERWENTのColoursoft、Newell BrandsのPRISMACOLORが好きです。

──絵の制作においてここ数年で注力していること、または好んで使用している色やモチーフなどはありますか?

透明度の高い絵具を使うのが好きです。あとは硬めの絵具でタッチを出すのも好きです。前は意識して避けていましたが、ザ・かわいらしい雰囲気、ガーリーなモチーフも実は好きなので、そういった絵も少しずつ描いていきたいと思っています。

これまでの作品、これからの目標

──今まで描いたオリジナル作品のなかで、特に思い出深い作品があれば教えてください。
 

「セーターはネイビー」(2019年)

「セーターはネイビー」(2019年)


東京のHB Galleryでの個展「風の音」に向けて描いた人物画の作品。魅力的に感じたモデルの資料を見ながら描きました。展示まで期限が迫っていたため、時間を掛けずにサラッと描いた絵で、描きこみが足りないかも……、と不安でしたが、周りからは思いのほか好評でした。モデルとはまったく違う人物になりましたが、時間を掛けて描きこまなくても、モチーフとなる人物が持つ強い魅力を「描きたい!」という気持ちがしっかり表れたのかもしれません。普段は比較的時間を掛けて描きあげることが多かったので、1つの発見でした。
 

「探しもの」(2018年)

「探しもの」(2018年)


東京のMOUNT tokyoでの個展「始まる前」のDMに使用した絵です。人物画を描く際は目から描くときも多くて、目は人物の表情にとって大事なパーツなので、この絵を描くまでは、目をつむった顔を成立させて描くのは難しそうだなと思っていました。おそらく、これ以前はちゃんと描いたことがなかったような気がします。苦手意識はありましたが描いたら意外としっくりきて、それまでスランプっぽい時期が続いていたこともあり、久々に楽しく描けた作品として、個人的に好きな作品となりました。この後は、目をつぶっている人物の作品が増えました。

──お仕事で描いた作品のなかで、印象深い作品はありますか?
 

『天然生活』2018年2月号(地球丸)

『天然生活』2018年2月号(地球丸)
特集「おいしい発酵食」 扉絵原画


発酵食の特集ページです。味噌・大豆・漬物という自分では選ばないモチーフでしたが、思いのほか楽しく描き進められました。和風のもの、渋いモチーフを描く楽しさを再認識するきっかけになりました。

──こんなシーンで使われる絵を描いてみたい、など夢はありますか?

広告で使われる絵が描きたいです。具体的なブランドを挙げるとしたら「無印良品」のお仕事に携わってみたいです。個展のときに「無印良品に合いそうな絵ですね」と言っていただいたことがあり、それを真に受けまして……(笑)。広告で使われているイラストレーションはいつも素敵なものが多くて、丁寧な生活にも単純に憧れています。

それと、好きなファッションに関連する広告やテキスタイル、グッズ制作にも興味がありますね。キャッチーでかわいいお菓子のパッケージやビジュアルのお仕事も関わることが出来ればうれしいです。今は赤ちゃんのことでバタバタなので、落ち着いたら子育てとお仕事を両立出来るようにしていきたいです。

 

 


 

 

 

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